悪魔がある時、集会を開きました。
「近頃人間は、何が良くて何が悪いのか
わかってきた様だ。このままだと
少しずつ神に近づいて行き、
我々悪魔は生きていけなくなる。
何か対策はないだろうか。」
そこで、いろいろな意見がでました。
「良いことをしても天国なんて行けないよ。
だって、もともと天国なんかないのだから」
と、ささやけばいいという意見。
「地獄というものはつくり話で、
本当は存在しないんだ。だから、
どんな悪いことをしても大丈夫だ」
と、ささやこうという意見。
大悪魔は、どれも今ひとつ気に入りません。
何故なら、人間は何をしたら良くて
何をしたら悪いか、
どうやら気づいているようだから。
その時、ある悪魔が
素晴らしい提案をしました。
「全て急ぐことはないよ」と
ささやけばどうか、という提案です。
その案が採用され、それ以来悪魔は
人間の耳もとでささやき続けているそうです。
「それは今やらなくていい。
急ぐことはない」と。
(ある国の昔話より)