さかいめのないことがらに ~ 新しきこととなつかしきことの邂逅
風は,よそからその土地にないものをもたらすわざ。土は,その土地にもとからあるもの。動と静。
時に風はよそからの土を運び,その土地の土と混じりあい,新たな土をつくり,その土がまた風にのってよその土地に連れ立つ。
風と土とは邂逅し,一体となって風土をつくる。
風は大気であり,土は地殻として地球そのものを成す。
地域もまた,地球の一部であるとともに,視点を変えれば,地球は地域から「さかいめなく」開かれ,形つくられている。
自己と他者,中心と周辺,聖と俗,東洋と西洋,時間と空間,主観と客観――わたしたちのものの捉え方は,二元論のしきたりをいつしか所与のこととしてきました。
未来は現在に,現在は過去に「さかいめなく」ゆわえられ,集落は地域と世界に「さかいめなく」むすびついています。
未来のあるべき世界を17の目標設定により実現する取組であるSDGsは,その内在的論理として,目標が描く具体的な在り方と実践手法を,各主体の自律的な構想と行動に委ねています。
わたくしたちは,未来のあるべき世界を「なつかしい未来」として構想し,これを実現していくためのひとつの手がかりとして「風と土と~なつかしい未来へのまなざし~」を著し,みなさまとの対話を通じて,具現化していくことが大切なことと考えています。
「風土的特性と人類史の使命とは離して考えることはできぬのである。」
(和辻哲郎「風土」)
この「まなざし」が,わたくしたちにとりまして,時間と空間,地域と地球,そして,みなさまとの邂逅の場となることも望みつつ。
CONTENTS
- Vol.1 蒼社川 静かに流れよ ~ 改名にこめられた鈍川の人々のおもい
- Vol.2 朝倉ガールズ ~ かけるぼくらにわたしらに あすの世界が待っている
- Vol.3 峰越しの道 ~ 奥伊予・奥四万十にさしこむ文化の光
- Vol.4 舒明天皇ゆかりの二湯 ~ 有馬の石碑にみる山内勇吉
- Vol.5 源氏の白馬か羊の群れか? ~ カルスト台地にみる戦争と平和
- Vol.6 風と土の尋ね人 ~ 新井満,岩波ホール,そしてSulikoとQvevri
- Vol.7 我が心は石にあらず ~ 瀬戸内の石風呂文化
- Vol.8 拝志川 あまきやさしきささやきに ~ 矢内原忠雄の原風景
- Vol.9 “たまがわ”の美 ~ 五島慶太と徳生忠常の贈り物
- Vol.10 治水のよすが ~ 美濃と伊予 清き濁流
- Vol.11 5時51分 松山発 宇和島行 ~ もうひとつの伊予灘ものがたり
- Vol.12 興亡 潮流と電流 ~ 名も奇抜なる瀬戸内海横断電力株式会社
- Vol.13 甘蔗の道 ~ 1969年2月 唐牛健太郎の四国遍路(前編)
- Vol.14 甘蔗の道 ~ 1969年2月 唐牛健太郎の四国遍路(中編)
- Vol.15 甘蔗の道 ~ 1969年2月 唐牛健太郎の四国遍路(後編)
- Vol.16 いま万感の想いを込めて汽笛が鳴る ~ 壺神山 零士の宇宙と清張の古代(前編)
- Vol.17 いま万感の想いを込めて汽笛が鳴る ~ 壺神山 零士の宇宙と清張の古代(中編)
- Vol.18 いま万感の想いを込めて汽笛が鳴る ~ 壺神山 零士の宇宙と清張の古代(後編)
- Vol.19 能登はやさしや土までも ~ 復興への一献(前編)
- Vol.20 能登はやさしや土までも ~ 復興への一献(中編)
- Vol.21 能登はやさしや土までも ~ 復興への一献(後編)
- Vol.22 水力発電とサウナ ~ 創生と再生のスパイラル(前編)
- Vol.23 水力発電とサウナ ~ 創生と再生のスパイラル(中編)
- Vol.24 水力発電とサウナ ~ 創生と再生のスパイラル(後編)
- Vol.25 不果志の弁明 ~ 木村久夫の余白,菅季治の遺稿(前編)
- Vol.26 不果志の弁明 ~ 木村久夫の余白,菅季治の遺稿(中編)
- Vol.27 不果志の弁明 ~ 木村久夫の余白,菅季治の遺稿(後編)